国際日本学部

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神奈川大学の風景
November 20, 2019
国際文化交流学科

身近なところから始まる異文化理解

「漫画や絵、映画も全て異文化を知るうえで、たくさんの情報が詰まった教材になる」と、ステファン・ブッヘンベルゲル先生は語る。幼いころからアメリカンコミックスに夢中になり、理解するために英語を学び、歴史も本から学んだ。「知りたい」気持ちがモチベーションになり、他国の文化を知る入り口にもなる。ポピュラー文化を多角的な視点で考察し、異文化への理解を深めていこう。

ポップカルチャーが異文化理解の原点

私は20年ほど前に来日しました。生まれ育ったドイツを離れ、日本という国で全く知らない言語、知らない文化に身を置いて自分を試したいと考えたのです。当時の私にしてみれば、日本は一番遠く、不思議な国でした。日本に来る前は、ほとんどステレオタイプな印象しかもっておらず、「日本人は毎日お寿司を食べて、みんな武道をしている」というイメージでした。それだけに、初めて日本にやってきて、そうではないと知ったときには、本当に驚いたものです。

大学ではドイツ語も教えていますが、私の専門は比較文学です。アメリカンコミックス、ホラー映画、ミステリー小説などのポップカルチャーが研究対象となります。アニメや漫画といったポップカルチャーを比較し研究することは、異文化理解の入り口として最適です。コミックスは「文学」と言えるほどの、多くの情報が入っている、れっきとした題材です。例えば、アメリカの1960年代のコミックスには、ベトナム戦争の話題がよく扱われ、当時の社会情勢が色濃く反映されています。

ゼミで扱っているステリー小説にも、学生たちは興味を示しています。もちろん伝統的なイギリスのミステリー小説の『シャーロック・ホームズ』シリーズや、アガサ・クリスティの作品なども好きですし、フランスの『アルセーヌ・ルパン』シリーズも素晴らしい作品です。ゼミ生たちは、各自が年2回プレゼンテーションをしますが、前期は、イギリスの伝統的なミステリーやアメリカのハードボイルド、刑事ミステリーなどの中から、自分が興味のあるテーマを1つ選んで発表します。後期には学生が自ら選んだテーマに基づいた研究を深め、発表します。多くの学生は日本のミステリー小説を題材に選びますが、そうした学生の視点が私にとっては大変興味深いものとなります。

広い視野で異文化への理解を深める

みなさんは「比較文化」と聞くと、2つのものを比較することを考えるかもしれません。しかし、これは違います。比較文化とはもっと幅広く、どんなことも比較することができるのです。例えば、コミックス、音楽、哲学…など、あらゆるものが題材となります。

むしろ、1つの文化に絞ってしまっては、視野が狭められてしまいます。ぜひ、幅広い視野で研究に取り組んでほしいと思います。私は博士論文を執筆する際、谷崎潤一郎の『細雪』とトーマス・マンの『ブッデンブローク家の人々』の比較をしました。その時は2つの文学作品の比較をしましたが、今にして思うと、もう少し幅広く捉えてもよかったかもしれません。

比較文化を研究するための題材は、必ずしも文字で書かれたものだけではありません。絵も、映画ももちろん研究の題材となります。そうした題材を理解するためには、異文化を理解する力が必要とされます。近年では、訪日外国人の数も年々増え、世界はグローバル化が進んでいます。

まずは、自分の国、日本の文化について意識を持つことから始めましょう。そして、コミュニケーション能力も磨きましょう。私の出身国であるドイツでは、日本のように「言わなくても分かり合える」ということはあまりなく、しっかりと自分の考えを言葉にして伝えなければ理解し合うことができません。自分の考えを相手に伝えること、相手の考えを理解することができて初めて、コミュニケーションは成立するものなのです。

「知りたい」モチベーションが学びに

言葉を知ることは、文化を理解することです。例えばドイツ語を学ぶにも、言葉だけを理解すればよいのではありません。きっかけは自分が興味を持てることでよいのです。もし、ドイツのサッカーチームが好きであれば、それがドイツ語を学ぶ理由にもなるでしょう。

興味を持つ対象は文学、料理、歴史…など、何でも構いません。みなさんが知りたいと思うことがあるならば、それがモチベーションになります。私はアメコミが好きで、そこに何が書いてあるのかを知りたくて、英語を学んできました。そして、それが研究対象となり、比較文化を専門とするようになりました。そのようなモチベーションこそが、比較文化を学ぶうえでは、やりがいにつながっていくはずです。

国際文化交流学科
教授

ステファン ブッヘンベルゲル 先生

比較文学:グラフィックフィクション(アメリカンコミックス)、ミステリー小説、ホラー映画ドイツ現代文学

掲載内容は、取材当時のものです

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