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November 20, 2019
国際文化交流学科

文学の世界から、文化が交わる場所へ

「答えがなかなか分からない、謎めいた難しさが文学の面白さ」と語る熊谷謙介先生は、自身もフランスの詩人・マラルメを生涯の研究対象とし、「長い時間をかけて難しい問題にチャレンジしていく、それこそが大学の学び」だと考える。フランスをはじめとしたヨーロッパ文化への理解を深めつつ、その世界観をどのように「翻訳」していくか。難しくも奥深い文学の世界を、多様な視点から読み解いていく。

「わからなさ」こそが、文学の醍醐味

文学の研究は、シンプルにいえば「読む」ということに尽きます。ただ、たくさん読まなければいけません。興味のあるものだけでなく、同じ時代に人気のあった小説や新聞なども読み、自分が研究している作品と比較することが大切です。それはとても地道な作業ですが、その作品の何が特別なのかを見つけることができるのです。

私は高校時代までは、はっきりとした正解を導き出すことのできる(と思っていた)理系の分野に魅力を感じていました。しかし受験勉強をしていくうちに、正解が一つではなく、さまざまな解釈もできる文学という学問に興味がわき、文学を読み解いていく難しさにむしろチャレンジしてみたいと考えるようになりました。

大学での研究とは、簡単に答えが出せる問いに取り組むよりも、長いスパンをかけて、自分の一生をかけられるような問いに挑んでいくことができるものです。むしろ、一生で終わらず、自分がやり残した研究を後世の人が引き継いでくれたら、それこそ一番理想的な形ではないでしょうか。

謎を解いていくプロセス、そのよろこび

私は、フランスのマラルメという詩人を長く研究しています。「謎めいている」という点では、世界でも1、2位を誇るような、解釈するのが難しい詩人ですが、フランス人にとっても外国人にとっても難しいと感じるマラルメを研究対象とすることは、世界の研究者たちと同じスタートラインに立って、競争ができるということです。そのような意味でも、やりがいを感じます。

晩年の作品『賽の一振り』は、さまざまなフォントや大きさの異なる言葉が散りばめられていて、ビジュアル的な斬新さもあり、私が好きな作品の一つです。マラルメは、難解な作品を作りながらも、、推理小説のようにそれを解くための手がかりを用意しているような気がします。一つの解釈で読み通すことができたときの喜びが、マラルメが与えてくれる最大の魅力です。

『賽の一振り』のレイアウト(『賽の一振りは断じて偶然を廃することはないだろう』柏倉康夫訳、行路社、2009年)

共通点を見つけて、楽しく学ぶ

ひと昔前までは、「文学」にはある種の権威があり、「教養なんだから読まねばならない」と、上から目線で教えられることが多い学問でした。でも、教科書に載っているような詩と合わせてあなたが大好きな曲も、歌詞に注意して聞いてみましょう。「実は同じテーマを扱っていたんだ!」と発見できる、フラットな視線が大事だと思います。もともと古典だって、同時代の人たちにとっては、自分たちの感情を突き動かすような、生々しいものだったのですから。

「詩」とは音の芸術であり、ラップと同じように「韻」を踏むものです。その音がどのように調和しているのか、全く異なる二つの語が同じ音を奏でている、といった発見があります。そのような「音」を生かしてフランス語で書かれた詩を、翻訳によって日本語という別の言語で、どのようにその世界観を引き移すか。それは翻訳者の腕の見せどころでもあり、翻訳を通じてまた別の文化が生み出されていくという重要な作業です。そのためには、フランスの文化や歴史、生活を知るのはもちろんのこと、日本語や日本文化についても理解を深めていかなければなりません。そこに国際文化交流学的な要素が込められています。

ミクロな「地域」から始まる、多様な「世界」

私はフランス文学を専門としていますが、フランス語やヨーロッパ文化など広く教えており、ゼミでは「多文化共生」をテーマとしています。フランスというと、「きらびやかなパリ」のイメージを思い浮かべると思いますが、実は移民、そして地方の文化に支えられている難解な作品を作りながらも、「地に足のついた」生活をしている人たちがたくさんいます。私はパリに留学していましたが、たまに地方に行くとパリとは違った文化があることを実感したものです。

地域の文化を知ることは、日本を知るうえでも、世界のことを考えるうえでも重要となります。「文化」とは決して国単位で作られるものではなく、さまざまな地域の文化が接触して築かれていくのが、グローバル化したとされる現代社会における文化の特徴でもあると思います。

これから私たちが迎える「多文化共生」の時代においては、さまざまな文化への理解を深めると同時に、学生たちには、日頃から国内外のニュースなどにアンテナを張り、常に「考える姿勢」を持ってほしいと伝えています。例えば、日本では死刑制度がありますが、単に賛成か反対かという議論ではなく、死刑制度について世界の人はどのように見ているのか、人権や文化的な背景など、多様な視点で考えてほしいです。

「世界」と「日本」という2つの視点を常にもち、現在を生きるわたしたちの問題について、一緒にゆっくりと考えていきましょう。

国際文化交流学科
教授

熊谷 謙介 先生

フランス文化・文学
多文化共生論

掲載内容は、取材当時のものです

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