国際日本学部

SCENE

神奈川大学の風景
May 9, 2022
日本文化学科

自分の中の好奇心を育て続ける

私たちが毎日使っている日本語は、その起源をはじめ、日本語の運用法に関しても、いまだにわからないことだらけだ。日本文化学科の山田昌裕先生は、日本語の中でも、助詞の使い方に焦点を当て、地道な研究を重ねている。学生たちには、「たとえ答えのない問題にぶつかったとしても、逃げずに解決策を発見できる人になってほしい」との思いを胸に、指導にあたる。

文法の歴史を解き明かす

大学卒業後、私は予備校の講師や国語の教員をしていました。しかし、授業を重ねる中で、「まだまだ知らないことがある。日本語についてもっと学びたい」という思いに駆られ、30歳を過ぎた頃に再び、大学院で学び始めました。

私の専門分野は、文法の歴史を解明する「文法史」と呼ばれるものです。「日本語が、どのような過程を経て、現代の姿になったのか」をテーマに、歴史的な観点から研究を続けています。その中でも、特に助詞の意味用法、変遷について興味を持っています。例えば、「私が」という主語を表す「が」ですが、古典の代表作である『源氏物語』や『枕草子』の中には、主語の「が」は存在しません。それが、千数百年の時を経て、どのような経緯や背景のもと、現在のような使われ方になったのか、さまざまな古典の資料を通して調査・分析をしています。しかし、「現象」として明らかになっても、その「理由」については、いまだにわかっていません。私が生きている間にどれだけ解明できるでしょうか。この研究を引き継いでくれる若い世代が現れたらうれしいですね。

答えの出ない問題と向き合う

現在、私が実践する研究手法は、主に電子データによる古典語の収集・分析調査です。昔は、一つ一つ用例をカードに書き込んで整理していましが、今はパソコンがあるおかげで、一瞬で大量のデータを取り扱うことができます。その結果、「データから何を読み解くか」という研究の本質的な部分に多くの時間を費やすことができ、より精度の高い研究成果を出すことにつながっています。

国際日本学部は2020年に開設した新しい学部です。ようやく2022年度から3年生によるゼミナールが開始します。そこで、初めて本格的に専門分野を教え、私が実践するパソコンを使った研究手法に関しても、学生たちに取り組んでもらおうと考えています。

また、1、2年次には、自分の考えをアウトプットするために必要な基礎的な学力や知識、スキルをしっかり身につけてほしいと思っています。そのため、基本的なレポートの書き方やデータ分析の仕方などを徹底的に習得するためのカリキュラムが組まれています。

さらに1年次では、「いかに早い段階で高校時代の勉強法や学習に対する考え方を洗い流せるか」という点が重要になってきます。なぜなら、社会に出てから必要になる力は、必ずしも答えがある問題ばかりではないからです。むしろ答えのない問題にぶつかることの方が多く、その解決策を自ら見つけていかなければなりません。答えのない問題に立ち向かうには、自らが問題意識を持って、情報を集め、整理し、論理的に考えていくことが必要です。大学の学びを通して、問題を自ら発見し、解決していく力を養ってほしいと思っています。

最初で最後の4年間をどう過ごすか

私が1年次の授業で最初に学生たちに話す言葉があります。それは、「この4年間で自分自身をどう育てるかを考えてほしい」ということです。大学生活の4年間は、学生たちが自由に使える一生に一度の宝物みたいな時間です。学生たちには、「自分を育てる」という意識を持ちながら、最初で最後の貴重な4年間を大切に過ごしてほしいと思います。

そのためには、常に好奇心を高めていく必要があります。好奇心がなければ、研究活動も発展しません。日本文化学科には、日本に関する好奇心さえあれば、さまざまな切り口で幅広く学ぶことができる体制が整っています。例えば、日本文学や日本語学だけではなく、アニメや映像、芸能といった文化的なことから歴史に関することまで、興味のきっかけはさまざまです。もちろん最初は、「日本のことをもっと知りたい」という漠然とした思いからスタートしても構いません。ここでの学びを通して、「こんな面白い分野があるんだ」という新たな発見につなげてほしいと思います。

また、日本文化学科の学生は、学科の枠を超えて国際文化交流学科や歴史民俗学科が開講している授業も自由に履修することができます。それも学生たちにとっては、国際日本学部で学ぶメリットの一つではないでしょうか。「日本」という大きなテーマを軸足に置いて、そこからさらに興味のある分野を深めたり、自分なりの視点で海外へ発信したりするなど、可能性は無限大です。学生たちには、自分自身の中にある好奇心の種を大切に育ててほしいと思います。

日本文化学科
教授

山田 昌裕 先生

日本語文法

掲載内容は、取材当時のものです

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