国際日本学部

SCENE

神奈川大学の風景
October 15, 2019
国際文化交流学科

実践的な学びで観光を担う人材を育成

「観光業は究極のおもてなしをする職業」と語る鈴木幸子先生は、通訳案内士や日本語教育で培ったキャリアと、長年の海外生活の経験を活かし、その知識を学生たちに伝えている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目前に控え、今後さらに需要が高まる観光人材。コミュニケーションを重視した少人数制のゼミやフィールドワークを通して、実用的な観光英語を学んでいく。

観光英語はコミュニケーションが鍵

私は、オーストラリアに20年ほど住み、現地の人々の日本語教育に携わっていました。これまで日本語の教科書を執筆したほか、カナダのアルバータ州教育省から依頼を受けて、中等教育の日本語カリキュラムを作成する仕事などもしてきました。神奈川大学では、英語教育を専門としていますが、通訳案内士として働いていた経験も生かして、「観光英語」を中心とした授業も担当しています。

例えば、ツアーコンダクターになるには、どのような英語が必要であるか。飛行機内で病人が出たときに客室乗務員に救助要請をし、いかに対応していくか。観光英語の授業では実際に現場で遭遇するであろう場面をシミュレーションしながら、学生たちの会話力を鍛えています。また、客室乗務員を目指す学生が多いので、客室乗務員が仕事上で使う英語表現なども専門的に教えています。観光業では特にコミュニケーション能力が必要とされるため、学生たちには、何より第一に「挨拶」が大切であると強調しています。教室に入ってくるその時から、しっかり挨拶をする。特に表情はコミュニケーションの重要な要素となるため、相手と視線をしっかりと合わせて、笑顔で接するようにと指導しています。

学生にはよく、「電車などに乗っているとき、困っている人がいたら自分から話しかけて助けてあげられるか」と尋ねます。それは海外の人だけでなく、日本人であっても困っている人がいたら助けてあげる、そのような相手の気持ちを思いやる姿勢が、観光分野では大切なのです。

日本を知ることで、海外を知る

新設される国際日本学部では、国際交流だけでなく日本文化についても学び、海外から見た日本文化についても研究します。「外から見て、日本はどのように思われているのか」を認識したうえで、いかに海外にアピールしていくのかを考える学部です。

日本に観光に来た方が、「もう一度来たい」と感じてもらえるようにするには、何をしていくべきかという視点で物事を考えてほしいと思います。観光とはいわば「平和産業」です。平和な社会でなければ観光業は成り立たないのです。だからこそ、観光に携わる人材を育成していくことは重要であり、国際文化交流学科が社会に果たす役割の大きさを痛感しています。

また、この学科では多様な国の文化や習慣も学ぶことができますので、自国について相手に知ってもらうだけでなく、自分たちも相手国についても学び、互いに異文化理解を深めてほしいですね。

体験を通した学びで、資質を育てる

私のゼミでは、通訳案内士になるための心構えとして、まずは教員である私とコミュニケーションをしっかりと取れるようにならなればならないと指導しています。ゼミでは私が通訳案内士をしていた時のエピソードなどを話しながら、私が経験したことと、学生たちの考えをすり合わせ、その対応が適切であるかをディスカッションしています。

そして、最終的には自分たちで数日間のツアー計画を立て、グループごとに担当を決めて、お客様に対するどのような気配りが必要かということまで綿密に考えたうえで、英語で通訳案内をしています。現場を想定したシミュレーションだけでは、実際のやり取りで生かせないこともあります。そのためにも、現場を体験することが実践力を養う学びになると考え、実体験を積むことを重視しています。

神奈川大学には留学生も数多く集まります。そこで、留学生たちと一緒に活動をするなど、コミュニケーション能力を高める実践的な学びの機会を多く取り入れています。コミュニケーションを円滑にするには、「相手に興味を持ち、それを表すこと」が大切です。「相手のことを思いやって何も言わない」ことは、日本人らしさでもありますが、海外の方々とのお付き合いでは必ずしもそれが通用するとは限りません。

来年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。多くの外国人が来日し、文化的背景の異なる人々と触れ合うことのできるまたとない機会です。ぜひ勇気を出して、最初の一歩を踏み出してほしいと思います。

国際文化交流学科
准教授

鈴木 幸子 先生

観光学-国際観光論・実務英語教育

掲載内容は、取材当時のものです

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