神奈川大学 国際日本学部
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 学部長からのメッセージ

「書を捨てよ、街へ出よう」?

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。国際日本学部を代表して、みなさんの入学を心から歓迎します。

国際日本学部は2020年4月に新たに設立された学部であり、2021年4月にみなとみらいキャンパスで新たなスタートを切ります。みなさんはみなとみらいの第1期生となるわけで、外国語学部や経営学部の学生とともに、知的好奇心に満ちた雰囲気のキャンパスを作っていくことを心から願っています。

一方で、2020年から続く新型コロナウィルス感染症の波は、わたしたちの大学生活を揺るがしました。多くの授業がオンライン授業となるなか、授業が終わった後に声をかけ合ったり、学食でご飯を食べながらおしゃべりをしたりする風景は、キャンパスから消えました。これまで当たり前だと思っていた日常は、本当はかけがえのないものだったのです。

2021年、神奈川大学はそうした日常をとりもどすために、キャンパスを開放していきます。感染防止に気をつけながら、みなさんとともに、授業やキャンパスライフに「ふれあい」、「はなしあい」の機会を作っていこうと思います。人と人のコミュニケーションは、メッセージの送受信のような機能に還元されません。相手の文化背景に思いをはせつつ、ことばや表現を通じて、共に生きていく空間を形作っていくこと――、これこそ、「文化交流-多文化共生-コミュニケーション」を大事にする国際日本学部が、みなさんに伝えたいことです。

そう、近くにいる友人との関係が共生のはじまりです。わたしたちはフィールドを世界に広げていくと同時に、日本そして地域社会の人々の生活に目を注いでいきます。世界の人々とつながることが技術的に容易になる時代にあって、わたしたちが考えるのは、まずは自分の近くで生きている人の声に耳を傾けることです。「外国人」というと、すぐに海外にいる人を想像してしまいますが、日本には300万人の外国人、さらには外国につながる人たちが暮らしています。国際日本学部のフィールドは「世界-日本-地域」ですが、あなたの身近にもこの3つは見られるのです。

ここでいきなりですが、タイトルの「書を捨てよ、街へ出よう」という言葉を知っていますか? 戦後の日本文化に大きなインパクトを残した寺山修司の著作の題名で知られていますが、実はフランス文学者、アンドレ・ジイドの作品に出てくる言葉です。「街へ出る」のも不要不急ならやめなさいと言われる時期にあって、みなさんには、「書を読んで、街へ出よう」と言ってみたくなります。知こそが、みなさんの進路を決めたり、ときには寄り道したりすることを可能にするものなのだから。

このコロナ状況において、まずは地に足をつけ、ときにはキャンパスを出ながら、地域を、日本を、世界を知る旅へ向かいましょう。実際の旅は難しくても、今はその準備と、知の蓄積をじっくりと行えるよい機会です。リュックサックにはまだ多くのものが詰め込めます。

コロナはわたしたちの社会、そして交流というあり方に課題をつきつけましたが、この難しいパズルを一緒に解いていきたい。これが2021年4月に生きる、わたしたちの望みです。みなさんと過ごす4年間を楽しみにしています!

国際日本学部 学部長 熊谷 謙介